これまで子育てにあった「当たり前」のことが今では、できなくなっているからこそ、柏島保育園は代々地域で受け継いでいる子育ての「当たり前」を日々、大切にしています。
この言葉は聖徳太子の「憲法十七条」であることをご存知の方は多いと思いますが、この言葉の意味を「人間関係の中でカドを立てず、仲良くするのが一番大切」だと、誤解されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この言葉の本意は、「大事な事は一人で決めず、必ず多くの人々とともに議論すべきであり、多くの人々と共に論じ、是非を検討してゆくならば、その結論は道理にかなうものになる」ということであり、人の意見を聞かず、自分の意見ばかりを主張しては物事は成就しないということを諭してします。また、昔から日本では欧米のような一神教ではなく、日本の古事記に出てくる「八百万の神」であり、互いの異なった価値観に対して「頷く勇気」を持っている世界でも稀な民族性を持っています。
グローバルで多様な価値観が混在し合う、これからの21世紀を生きる子どもたちに、先人が残してくれたコミュニケーション力を生きる力として身につけて欲しいと願っています。
近年の幼児教育の現状は、子どもへの新たな教育方法が増え続けています。幼児期に様々な体験をすることは子どもにとって有意義なことですが、生まれて間もない子どもの人間形成の原点は「躾」です。
身を美しくすると書く「躾」の語源は仏教語で「習慣性」を意味するじっけ(習気)」が一般に広がる過程で「躾」として定着したと言われています。「躾」の内容はその時代、時代の文化や価値観によって躾の内容も変っているようですが、人として普遍的なものは変わりません。躾とは、その子にどう育ってほしいのか、何を身に付けてほしいのか、家族や社会が期待していることを、その子が自主的、自発的に動けるよう教えていくこと。期待される行動が習慣になって、考えなくても自然とできるようになることが「躾」と言えるでしょう。
裁縫で称する「躾糸」とは、縫い目やスーツの形を正しく整える為の仮の糸で、躾糸を取った後も正しく美しい形を崩さないためにあります。子どもに話を戻すと誰かに言われないとできないようでは「躾」とは言えず、誰も見ていなくてもできる状態になって「躾」が身につていることになります。人間の基礎とも言える「躾」が身につかない状態で、幼児期に読み書き計算、英語や体操が人よりできたとしても、人と人の間で生きていくのが人間。今後の長い人生で他者から愛され、豊かな生活を過ごせることは難しいでしょう。
自園では「ハイと素直に返事ができること」「身の回りのことを自分でできること」「挨拶ができること」を大切にしています。人との関係で何かができるというのは、人を信じるようになること。その為にはまず親を信じて親との人間関係をしっかりつくることが大切です。それには、子どもが価値ある存在として認められていると実感できるように、無条件で受けいれてあげることが大切です。子どもは自分が本当に愛されていることを知ると、その信頼感から他の人も信頼できるようになり、自分自身も信じ、自信をもつことができるのです。自分の欲求がたくさん満たされた子どもは、自分の存在を肯定し、人を愛し、人と調和した行動ができるようになる。それが本当の自立です。自立は急がせるものではなく、ゆっくり、一つ一つの言葉かけを積み重ねながら、待ってあげることです。
子どもの躾は大人と子どもの信頼関係があってこそ、成り立ちます。社会的な自立行動のできる人は、人との調和を取りながら成果を生み出すことができる人なのです。
笑顔で挨拶できる子はご両親や周囲の大人たちから愛情を十分に受け取り、自己肯定感の高い子が多い傾向があります。脳は、笑顔になると心も楽しく前向きになる思考を持っていますので、色々なことに興味関心を持ちやすく、積極的な傾向があります。
挨拶を毎日きちんとできる子どもは、他人との関係を上手に築くことのできる基礎力が育ちます。第一印象が良く、相手の心に入りやすく、人との関わりを持ちやすくなります。反対に、挨拶が苦手な子どもは、人との関わりの第一歩が踏み出せず、人との関わりが苦手になってしまいかねません。挨拶は相手とのコミュニケーションの「きっかけ」を作るとても大切なものです。この「きっかけ」を上手に自然とできるようになることが、人とのコミュニケーション力を大きく育てると言っても過言ではないのです。
幼児期の躾が身に付いているかどうかは「挨拶」に顕著に表れます。自然と挨拶ができるお子さんのご家庭でご家族同士、日常的に挨拶を交わす習慣があり、家庭環境、家族関係の豊かさが伺えます。
最近は他人との関係が希薄になり、隣人やご近所の人にも挨拶しないことが都市部などでは当たり前になってきています。テレビや新聞などのマスメディアには毎日のように様々な事件が取り上げられます。地域の人間関係性も年を追うごとに希薄になっている時代だからこそ、「笑顔で挨拶ができる子どもたち」は地域社会の繋がりを回復させてくれる、とても重要な存在ではないでしょうか。「平和は微笑みから始まる」というマザーテレサの言葉にもあるように、人と人とを繋げる、人間らしい生活の起源とも言えるのではないかと捉えています。挨拶は世界中の人びとが行っています。日本では、挨拶は礼儀の一環として大切に考えられていますが、他人と心を通わせようとする第一歩としても挨拶はとても大切なことです。
柏島保育園の所在地の地名の柏島と、5月5日の端午の節句の供物として用いられる柏餅に共通する「柏」をシンボルキャラクターに選定しました。
柏の葉は落葉樹であるにも関わらず、新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系が途切れない、子孫繁栄」の縁起物とされています。端午の節句に柏餅が登場したのは江戸時代、徳川九代将軍家重から十代将軍家治の頃で、地方大名が参勤交代で江戸に来た際、柏餅を知り日本全国に広まったとされています。柏島保育園の保育に対する基本理念が、柏餅のように広く浸透して行くことを願っています。
ロゴには柏の葉と柏島の自然の豊かさをイメージした緑を使用しています。